好きになれとは言ってない




「いらっしゃいませ」
と真尋は顔を上げた。

 来た客は、常連のOLさんたちだった。

 にこやかに挨拶をする。

 今日は遥ちゃん、来ないのか、と真尋は他にあまり光のない道で、ぽうっと光る自分の店の看板を見た。

 そんなに量を食べる方ではないのだが、実に美味しそうに食べてくれる遥には作り甲斐がある。

 航と並んで、楽しそうに焼きそばを食べていた遥を思い出し、なんとなく自分も食べたくなった。

 今日の晩ご飯は焼きそばにしようかな。

 そういえば、今日は兄貴も来ないのか、と時計を見、水の用意をしながら、またガラス越しに暗い夜道を眺めた。





< 158 / 479 >

この作品をシェア

pagetop