好きになれとは言ってない
「えーと。
 元社員で、今、臨時で、いらしてるおばあさま」

「落ち着いて、店の雰囲気にあった美人だ」

 遥が笑う。

「じゃあ、社食で会ったら、言っときます。
 あ、これ、昨日の本です。
 お貸ししますよ」
と遥が本を差し出してくる。

「もう読んだのか?」

「はい」
と言った遥は、何故か、そこで、にんまり笑う。

「あ、課長。
 そこ空きましたよ」

 リストラ大魔王じゃなかったのか、と思いながら、遥が課長と呼ぶのを聞いていた。

「お前、座れ」

「あ、ご老人が居ました」

 そんな、なんてことない会話をしているうちに、品川に着いた。

 いつもより随分早く感じたが。

 まあ、きっと、気のせいだ、と航は思った。





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