不安の滓
 叔父が亡くなった。

 とはいえ、小学校低学年の頃に二、三回会ったことがあるくらいで、さしたる親交も無い人だ。

 葬式に出席しても悲しみに暮れる、というようなこともない。
 自分の兄が亡くなったということで母や祖母は悲しみに暮れているが、それでも私にとっては葬式というのはジメジメとしていて、感傷に浸ることも出来ない程度の思い出も無い者にとっては『早く終わらないかな』ぐらいの思いしか浮かんで来ない。
 叔父が死んだという連絡を受けてから、通夜、葬式と滞りなく儀式は進み、ようやく火葬の運びとなったわけだ。

 棺桶の中で、眠るように死んでしまっている叔父に線香を手向ける。
 死に化粧が施されているためか、死んでいるはずの叔父の顔はまるで生きているかのように頬にうっすらとした赤みまで差している。

 ほどなくして、叔父の入った棺桶は火葬炉に入れられた――。
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