宮野さんはいつも困ってる
「じゃあ、またあとでな」

「また、あとで」

ひらひらと手を振って行ってしまった先生に、手を振り返す。
姿が見えなくなると小さく深呼吸。
まわりの視線は気になるが気にしない方向で。
教室まで行くと、ドアの前でもう一度深呼吸。
終わると思い切ってドアを開ける。

「お、おは、……よう」

一瞬、シーンと静まりかえった教室。
でも、次の瞬間には元の喧噪に戻ってた。
ちらちらと向けられる視線が痛いが、仕方ない。

小さくなって自分の席で時間が過ぎるのを待つ。
そのうち、チャイムが鳴ってホームルームが始まった。
教室にきた杉本先生は目が合うと、小さく頷いた。

始まった授業。

最近、勉強するようになってたとはいえ、ずいぶん遅れてる。
期末テストも近いのに、これじゃダメだ。
急に、いままで自分が無駄にしてきた時間が惜しくなった。
少しでも遅れを取り戻そうと、わからないなりに必死に授業を聞く。
< 266 / 287 >

この作品をシェア

pagetop