宮野さんはいつも困ってる
ポケットをごそごそと漁った、先生の手の中から出てきたのは、小花が揺れるネックレス。

「これさ。
あいつの形見なんだ。
俺が送った奴。
なんか宮野に持ってて欲しくて。
……ダメ、か」

また黙って首を横に振ると、先生の手が私の背中に回った。
離れると胸元に小さな花が落ちる。

「ありがとな。
……それから、宮野。
いままでしたキスはカウントするな。
今度おまえが好きな人とするキスが、ファーストキス」

驚いて顔を上げると、なんでもないように笑ってる先生に悲しくなった。

「なんでそんなこと云うんですか!?
私のファーストキスの相手は先生です。
だって、私は、……きっと先生のことが、好き、だったから」

じわじわと涙が滲んでくる目で先生を見つめる。
先生もじっと私を見つめてる。

「……そうか。
俺もたぶん、宮野のことが好きだった」
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