アフタヌーンの秘薬
「こっちも!」
お茶の葉が色鉛筆で描かれたパッケージのシャンプーは手の平に載るほどの小さいサイズのボトルだ。
「すごい! 使ってみたい!」
商品の爽やかなデザインと初めて手に取った食用以外のお茶の商品に感動した。
すぐにお茶の効果を感じられそうなハンドクリームを買うつもりで手に持って店内を見て回った。聡次郎さんは辺りをキョロキョロと見回す私を可笑しそうに見ていた。
「楽しそうだな」
「だって……自分の仕事に関係のあるものに興味が湧かないわけがないじゃないですか。聡次郎さんもでしょ?」
「まあな」
「見て! 飲むお茶も売ってますよ」
ずっと笑顔でついてくる聡次郎さんを振り返り話しかけた。棚にはお茶の葉の袋が数種類並んでいる。隣には女性受けしそうな花柄などの可愛い急須と湯飲みが置かれていた。
「まあお茶は龍峯の方が美味しいと思いますけど」
そう言って手に持ったハンドクリームだけをレジに持っていこうとすると、後ろから聡次郎さんが手を伸ばしお茶の袋を取った。
「試しに買ってみる」
「そうですか?」
「梨香が淹れて」
「え?」
「このお茶を今度淹れて。他の会社のと飲み比べ。これも勉強でしょ」
「はい……」
いつの間にか龍峯でお茶を学ぶことが当たり前だと決めつけられてしまったようで癪だった。けれど今では日本茶に興味がある。聡次郎さんが手に持ったお茶も淹れて飲んでみたい気持ちはあった。
レジに自分で買うつもりのハンドクリームを置くと聡次郎さんもお茶の袋を置いた。