3度目のFirst Kiss
彼の真意が分からない
どれぐらい時間が経っただろうか。
彼が私の鞄を持って、こちらに歩いて来た。

その顔は、笑っている。
少なくとも、最悪の事態にはなっていないのだろうと、その顔が知らせてくれてる。

「広瀬さん、お待たせしました。遅くなって、すみません。」

彼は、そう言いながら、ソファーに座っている私に
手を差し出した。

その態度があまりに自然だったので、私は彼の手を掴みそうになってしまったけど、一瞬で我に返り、
差し出してしまった手で、自分の鞄を指して誤魔化した。

「鞄、ありがとう。これで、私は帰れるわ。生田君は、宴会に戻っていいよ。」

その後の状況を、最悪の事態は避けられたとしても、どうなったかは知りたいと思う反面、それを聞くのも怖い。

でも、そんなこと、生田君なら察している。

「どうなったか気になりませんか?」

気なるに決まってる。
それにさっき、蹴りをつけると決めたばかりだ。

「取り敢えず、みんなには広瀬さんのことはバレてません。確かに、田崎にはバレていたみたいだけど、それはしっかり口止めして来たから、大丈夫です。」

「どうやって?」

あの状況で田崎君に口止めなんてできる?

私の不安は、まだ消えない。

「方法は秘密ですけど、大丈夫です。俺を信じて下さい。奴とはある意味、同期だし、あいつも馬鹿じゃないので、広瀬さんから嫌われて、仕事に支障が出るのは困るのは分かってますから。」

「私は、田崎君とは仕事で殆ど関わりなんてないわよ。だから、彼が困ることなんてないんじゃない。」

私と田崎君は、そもそも課が違うのだから。
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