3度目のFirst Kiss
波乱の展示会
朝、新幹線の駅に着くと、川口さんが待ち合わせの場所でキョロキョロしているのが見えた。

川口さんが私を見つけて大きく頭を下げる。

「おはよう。早いね。」

「おはようございます。緊張して早くに目が覚めてしまったら、家にいても落ち着かったので。」

初々しくて可愛い。それに寝不足とは思えない肌艶だ。太陽の光は容赦なく、それを際立たせている。

「そうだよね。出張って緊張するもんね。川口さんは、初めて?」

「前に一度だけ、お手伝いをさせてもらったことがあるんですけど、現地の雑用係だったし、1日だけだったので、今回とは全然違います。それに、今日は生田さんと一緒だし。」

「そっか。でも、出張なんてその内に慣れるよ。」

私は敢えて、川口さんの最後の言葉を聞き流した。
彼女もそれ以上は、何も言わなかった。

「まだ、待ち合わせの時間まで少しあるし、コンビニで飲み物でも買って来ようか?」

私は、この微妙な空気を避けたくて、そう提案してみた。

「はい、じゃあ、私も行きます。」

それじゃあ、意味がない・・・。

「いいよ、川口さんは、ここでキャリーケースを見てて。生田君が来た時に、2人ともいないとすれ違いになるかもしれないし。川口さんは、飲み物は何がいい?」

私は、最もらいし言い訳と先輩という力を使って、彼女に有無を言わさない様に話を進めた。
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