Drinking Dance
「今回のことに関しては本当にいい勉強になったと思ってます。

今回で経験したことを次に生かすことができればそれでいいと、僕は考えています」

星崎さんはそう言うと、グラスに口をつけた。

次に生かす、か…。

前向きに物事を考えている彼に私は尊敬を抱いた。

「でも、本当にいい人だったのにな…」

星崎さんは息を吐くと、グラスをテーブルのうえに置いた。

やっぱり、落ち込んでいるみたいだ。

そりゃ、そうか。

35年間の人生の中でできた初めての恋人だっただけに、その分失恋のショックは大きいものだろう。

「大丈夫ですよ。

前向きに物事を考えていたら、稔さんにも素敵な人が現れますよ。

まだまだ人生はこれからですよ」

私は言った。
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