ベル姫様と溺愛ナイト様
「姫、探しました……!」
「見つけたっ……!
やっと……っ!!」

日の暮れかけたディディールの町の入口、一人の若き青年は静かに言葉を発して崩れ落ちるように膝を地につけた。
そんな青年を、町人は何事かと遠巻きに見ていた。
青年を案じて声をかけようと近づく者もいた。

「大丈夫かい? お兄さん?」

「どうした? どっか悪いのか?」

「いや……。ただ……」

優しい声に顔を上げた青年の顔は、今にも泣き出しそうにくしゃくしゃだった。
ただその顔が、悲しそうなそれではなく、嬉しくて仕方なさそうなものだったから、町人は笑った。

「なんだい?
とっても良いことでもあったのかい?」

「そんなくしゃくしゃにして、いい男が台無しだって。
そーゆー顔はな、嫁もらった時か、自分の赤んぼが生まれた時にするもんだぜ、兄ちゃん」
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