こくおうさまのすきなひと

その時、王女は

***


「おはようございます、ミネア王女。今日もいい天気でございますよ」


甘いキャンディのような聞き慣れた声と共に、暗い視界が瞼を閉じていても一気に明るなり、眩しさを感じた。

侍女のティアが、カーテンを開けたのだろう。

私は瞼を擦りながら、上半身をゆっくりと持ち上げた。


「ん~……おはよう、ティア。今日も一日よろしくね」

「こちらこそ、ミネア王女。さあ、顔を洗って、ドレスに着替えましょう」


こんなやり取りをするのも毎回の事。

私はベッドから出ると、そのまま顔を洗いに湯浴み場へと向かった。


ミネア・ウィス・アーネスト。

先週18歳を迎えたばかりの、アーネスト国の第一王女。


この国では男も女も18歳を迎えると、成人としてみなされる。

つまり、ようやく私も大人の仲間入りをした、と言う事。



先週は誕生日を祝うパーティーを始め、成人としての儀式など色んな行事が目白押しで、ゆっくりと寝られるような状態ではなかったのだけど、ようやくそれもひと段落し、落ち着いた夜を迎えられるようになった。


18歳を迎えたからといって、自分自身は何も変わった訳ではないけれど、周りは徐々に変化していく。


今まで「姫様」と呼ばれていたのが、誕生日を機に「ミネア王女」と呼ばれるようになり、部屋も一回り広い部屋が与えられた。


それまで家庭教師がついていたのも無くなり、これからはひとりで勉強をしろ、という事なのだろう。



大人になるという事は、自立すること。


これからは自分で考え行動せねばならないのだと、周りの変化で気付かされる。

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