【完】『轍─わだち─』

まりあと耀一郎、つばさの三人は江ノ電に乗ると、七里が浜まで出て、海沿いにあったプリンの店に寄り、通されたテラス席で、クリームやフルーツで飾られたアラモードを食べた。

「まりあからつばささんの話は聞いてますよ」

耀一郎は言った。

「とても真面目で努力家な後輩だって、いつもまりあが話してますからね」

まりあによると耀一郎の仕事は絵画の先生で、専門は水墨画だという。

「たまたま私が美術展のサポーターやったときにダァが専門家としてついてくれて、それがきっかけなんだけどね」

そういえば。

まりあはアニメの専門学校を出ている。

声優を目指しながら、イラストもかじっていた時期があったらしく、まりあの周りには絵描きやアニメーターも多い。

つばさはプリンを口にしながら、

「あの」

と帽子について訊いてみた。

すると。

「これはね、キャスケット」

耀一郎は帽子を脱いだ。



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