【完】『轍─わだち─』

パーティーにはそれぞれの身内やら親しい友人やらが呼ばれている。

モデルの先輩でもある岐部まりあもその一人で、つばさとは相部屋で暮らしたこともあって、

「おへその下にあるほくろを知ってるのって、この中だと私とアッキーぐらいだよねー」

などとしたたかに放言し、周りをハラハラさせていた。

テーブルにはケーキが並ぶ。

みな、これらのケーキは洋菓子屋の兼康家の側から振る舞われた。

それが。

森島家の京焼の鳳凰の絵付けがなされた皿に盛られて出される。

中でも。

酸味にこだわった、本場のアメリカ仕込みのニューヨークチーズケーキは、参加者の誰もが賞賛するほどの味わいで、

「さくらん家はこれだけで稼げるよ」

などと、彬の妹のさくらと交際中の高杉大輔という、絵に描いたような若くしてネット関係の会社を立ち上げた実業家なんぞは、

──これを知り合いのバイヤーを経由して、物産展に出してはどうか。

と思ってしまうほどの、味覚の衝撃波を受けたらしかった。



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