不確かなもの
「あなたも死にたかったの?」と彼女は言った。黒髪がとても似合う綺麗な女のこだった。その綺麗さは透き通るような透明感で、肌に触れれば貫通してしまうように思えた。

「だったらなに?」と僕はぶっきら棒に答えた。そう僕はぶっきら棒なのだ。

「私もそうだったから。死にたかったの。限りなく、限りなく。」と自嘲しながら彼女は言った。

「きみはうちの学校の子?」彼女のことは見たことがなかった。こんな綺麗な子が同じ学校なら、見忘れるわけがない。


「好きにしていいわ。あなたがこの学校と言うならこの学校で。あなたが違うっていうなら何にでもなるわ。」かきあげた黒髪が空中に浮かぶ。なんだかその髪にひどく触れてみたくなった。もし僕が美容師だったら間違いなく彼女にカットモデルお願いしただろう。けど僕は美容師じゃない。何もない死にたい高校生だ。

「よく意味がわからないよ。君は転校生?」と僕は質問する。

彼女はひとつ溜め息をついて「だから、あなたが決めていいの。私のことはあなたが決めるべきなのよ。背の高さから、足のサイズから好きな芸能人まで。なんだったら胸のサイズも決めていいわ。うふふ。私は透明なの。名前もないわ。私は何もないの。無なのよ。限りなくね。」

僕は夢でも見てるようだった。というか、夢なんだろぅ。これがノストラダムスが残した予言なんだろーか。少し間を空けて「なんだか君は少しおかしいみたいだね。というか僕が少しおかしいらしい。」
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