想いの境界線
いつもの冗談や茶化したりすらる時に見せるにやついた顔や、さっきのへらへら笑っていた顔とは違う遥斗の表情に不覚にもドキッとしてしまい、目が反らせない。


「俺が王子様なら、俺にとってのお姫様は七緒しかいないよ。確かに俺達は幼馴染みだけど…その前に、男と女だよ…だから、有り得ないことはないと、俺は思ってる…」


優しい笑顔のまま遥斗の大きくて細長い人差し指の先が優しく私の唇に触れる。その指をそのまま自分の唇に押し当てる。


「…なっ…⁉」


思いも寄らない遥斗の行動に驚いて言葉にならない声を上げる。自分の顔が急速に赤くなっていくのが分かる。


「今日はこれで我慢してあげるね」


これっていわゆる間接キスなんじゃ…しかも指って…遥斗の指で…‼


未だ顔の熱が引かず、その場で固まってしまった私に


「それじゃ、行こっかぁ~ななちゃん、鞄かぁ~しぃ~て」


いつも通りの遥斗に戻り右手を差し出す。


「い…いいよ、大丈夫だから」


「大丈夫じゃないでしょう~?俺らの分の弁当持ってくれてるんだし、ななちゃんの鞄は俺が持つの!」


そう言いながら胸に抱えていた鞄を取り上げ、自分の鞄と重ねて左脇に抱える。
遥斗の横に並び二人で学校へ向かい歩き出す。
遥斗が自分の分を持ってくれたら少しは軽くなるのだが、


『ななちゃんが作ってくれた弁当はぁ、昼にななちゃんから手渡された方が嬉しいんだよ~』


朝作りたてで渡しても同じだと思うのに、


『気分的に違うのっ‼」


と、断固拒否された為遥斗の希望でお昼に手渡すようにしている。
初めは凄い注目の的だったな。
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