それは許される恋…ですか
お母様と呼ばれた母のことを思い浮かべた。
食べることに関して煩かったのは、母よりも父の方だ。


「はい、まあ」


どうでもいいから適当に返事をしておいた。
私達の会話を聞いて、チズちゃんが余計なことを言い始める。


「明香さんのご両親て、印刷会社を経営されてるんですよ。だから、明香さんはお嬢様なんです」


とんでも無く不似合いなことを言われ「違います!」と声を上げた。


「お嬢様とか言われるような程大きな会社でもありません!吹けば飛ぶようなサイズの小会社です!」


息を巻く喋り方をする私に丸い目を向けるお母さん。口元だけを緩ませて、でも…と続けた。


「お仕事としては成り立ってるんでしょう?だったら、しっかりと経営されてるのね」


両親のことをこれ程も無いくらいに褒めちぎった。
思い返してみると、朝から一言だってダメ出しをしない。

これが会社の社長の奥さんなんだ…と思う。いい所の奥様だから、育ちも良いに違いない。


「私の父は事業に失敗してばかりだったから羨ましいわ」


思いも寄らない言葉に弁当を包もうとした手が止まる。


「えっ!?お仕事失敗されてばかりだったんですか?」


私の言いたい言葉をチズちゃんが聞いた。


「ええ、そうよ。野心家で好奇心ばかり強くて冒険家だったの。そう言えば聞こえはいいけど、赤字続きで大変だった」


過去を振り返るにしては顔元が明るい。
手を止めたまま話す様子を見続けた。


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