放課後、ずっと君のそばで。


「大変なこともあるけど、やっぱりお母さんには天職だと思ってるから」


「天職、か」


私が呟くと、お母さんがコクンと頷いた。


「まぁ、楽しんだ結果で倒れてしまって、こうやって心配かけたけど」


お母さんが途中で言葉を区切り、突然立ち止まった。


私も足を止める。


「これからは、歳を考えてほどほどに働きます」


そう言って、私に向かい頭を下げてきた。


私は口元に笑みを浮かべ、お母さんを見る。


横髪を耳にかけながら頭を上げたお母さんは、今度は切な気に眉を垂らして私を見た。


「莉子も、あの時の気持ちを思い出してほしい」


「......え?」


「今の莉子は、色々難しく考え過ぎだと思うよ。もっとこうシンプルに、好きだな、楽しいなって、小さい時みたいに音楽をやってほしいなって、お母さんは思うよ」


「.........」


「最近のあんた、前と全然違うんだもん」


お母さんに言われて、ハッと、愛美の言葉が脳裏をよぎった。


『去年の莉子はオーディションを心待にしてたもん』


愛美の言っていたことはこういうことか。


あの時はただイライラして愛美にキツクあたってしまったけど......。



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