放課後、ずっと君のそばで。


もやもやと気分が晴れないまま、敗者復活のオーディションを迎えてしまった。


思うことは、たくさんある。


私だけが、敗者復活に挑戦してもいいのかって......。


コウちゃんは、怪我で試合に出られないのに......。


コウちゃんは、小さい頃からの夢を、ひとつ無くしてしまったというのに......。


私は、音楽準備室の顧問の前でトランペットを固く握った。


緊張はしていない。


だけど、たくさんの複雑な思いが入り交じって、トランペットを持つ手に、力が入るんだ。


これは、私の夢を叶える最後のチャンス。


〝目指せ普門館〟


コウちゃんのことを思うと心が痛いけれど、私には立ち止まっていた時間がある。


これ以上、時間を無駄にしてはいけないよね。


コウちゃんが叶えたかった夢は、形が違うけど、私が叶えてみせるから。


だからコウちゃん。


怪我をしてしまった自分を責めないで。


どうかお願いだから、無理して笑わないで。




< 184 / 312 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop