Sweet Hell
第1章

出会い

建ち並ぶビル群の隙間から朝日が差し込む。
今日も新たな1日が始まる。

私の名前は木下 楓(きのした かえで)。
どこにでもいる普通のOL。
見た目は可もなく不可もなくで
飛び抜けて可愛い訳でもないし、だからといってブスでもない。
独身彼氏なしの三十路。

仕事は駅から少し歩いたところにある
5階建ての小さなビルの中にある商社で
輸出貿易事務を行っている。

オフィスに入り、席に着くと早速隣に座る同期の加藤みほが
声をかけてきた。

「おはよう!ね!今日の新しく入ってくる営業担当者の人、気にならない!?」

「おはよう!あーそういえば、今日だったね。別にそこまで気にならないけど
仕事が出来る人だと良いよね〜」

以前いた前任の営業担当者が異動してしまったため
後釜として今日別の担当者が他の支店から異動してくることになったのだった。

「それがね、彼が前いた部署の人から聞いた話なんだけど
手放すのが嫌な位、仕事が出来る人でしかも超イケメンなんだって〜」

「えー!?超イケメンなの!?それは良いじゃん!」

「でしょ!でしょ!一緒に狙おうね!」

「何を?」

「お嫁さん」

「はぁ!?」

みほは、朝から何を言ってるんだと思った。

「お嫁さんって。そんなイケメンだったら独身な訳ないでしょ?」

「それが独身なんだってよ。彼女いるかまでは知らないけど」

「へぇ・・・」

そんなやり取りをしてる間に始業のチャイムが鳴り、
上司が見知らぬ男性をオフィスに連れてくると皆が立ち上がり、朝礼が始まった。
< 1 / 86 >

この作品をシェア

pagetop