ワケありオンナとワケあり男子の共同生活


佐々木さんが手を伸ばして触れたのはわたしの腕の中に女の子。ふわふわと柔らかい髪が時々くすぐったい。

「お名前は?」

「さくらです。ひらがなで"さくら"です。もうちょっとで1歳になります」

ほっぺたをつんつんとつつく佐々木さん。さくらはちょっと嫌そうに首を横に振る。

「可愛いわね」

そんなイヤイヤな表情も佐々木さんは可愛いみたいで頬を緩ませて優しい顔をしている。子供って周りを笑顔にする不自然な力がある。

「目はお母さんで、鼻と口はお父さんに似てるわね。2人に似てとても可愛い子ね」

佐々木さんは最後までニコニコして、"バイバイ"とはるかに言って精肉コーナーに行った。


わたしとあきくんは2年前に入籍した。

1年前に子供が生まれた。

妊娠が分かった時はすごく嬉しかった。1度子供をおろすと妊娠しにくくなるって聞いたことがあったから不安だったけど、きちんとさくらは生まれてきてくれた。

さくらはわたしとあきくんの愛の結晶だ。今はそうだと言いきれる。


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