ワケありオンナとワケあり男子の共同生活
共同生活のはじまり




──あゆ、頼む、俺といたいならそうしてくれ。

両手を合わせて必死に懇願する彼。

選択肢は1つしかなかった。

全てが狂った。

──アノ人の声。



遠い意識の中、肩を揺らされる感覚。

「……さん、あゆさん」

「ん~」

急に光が目元に差し込み、重たい瞼がパッと開いた。ガタンゴトンと電車の音が耳に入る。

「あゆさん、おはようございます」

聞いたことある声、見覚えのある顔。

「……おはよ、あきくん」

寝起きで大きな声が出ない。

目の前にあるのは癒しのあきくんスマイル。朝日も手伝っていつも以上に彼の笑顔が輝いている。

カーテンを開けたのはあきくんか。

窓に沿って配置されたベッドなのに、彼はどうやってカーテンを開けたのだろうか。

多分わたしの身体を跨がないと開けれない。

人が泊まりに来た時のために一応もう一つ布団がクローゼットに入っていて、あきくんは床に布団を敷いて寝ている。

その布団は今、綺麗に畳まれて部屋の隅に置いてある。

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