rabbit vanira
そして迎えた受験当日。


「ごほっ…」


「羽咲ちゃん、ほんとに大丈夫かい?」


「大丈夫…」


私は熱を出した。


「要に送っていってもらえば?」


「うんん。お兄ちゃん、今勉強してるから。


せっかく、パリに行けるかもしれないんだ


から…私のせいで、夢潰したくないから…」


「そうかい?」


「うん…行くね…ごほっ」


私はふらつく足元を奮い立たせ、歩いた。


最寄り駅に着き、受験会場まであと少し。


その時────────


不意に、誰かの肩が私に当たる。


ふらふらな私は車道に倒れてしまう。


ぱーっ!


軽自動車が私の方へ向かってくる。


でも、怖さと怠さで立つことも動く事も出


来ない。


私はギュッと目を瞑る。


お兄ちゃんっ…!


「羽咲………っ!」
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