君が生きたこの世界で
ー「だからね、愛唯羽ちゃん。
もしも機会があったら考えたり、調べたりしてみてあげてくれないかな?」ー

陽太の家を後にする前、百合に言われた言葉が愛唯羽の中でぐるぐると回っていた。



家に帰る途中、愛唯羽は早速サンザシについて検索した。

サンザシ 画像

出てきたのは白い花。
バラ科で中国の花、とだけ。

陽太はなぜサンザシを選んだのか、愛唯羽には分からなかった。








『ただいまぁ…』

陽太の死が現実で、受け入れなければいけないけど受け入れきれずにいる愛唯羽は家で元気を作る気になれなかった。

「おかえり。」

愛唯羽を迎えたのは、愛唯羽の母である朱里‐アカリ‐だった。
朱里は愛唯羽の元気がない理由を知っていた。
愛唯羽が家を出た後、百合が家に来て陽太の死を告げた。
何度か陽太に会っていた朱里もまた、陽太の死を信じられないでいた。
朱里は、数回会っただけの自分が信じられないのに、毎日当たり前のように一緒にいた愛唯羽がすぐに受け入れられないことを知っていた。

「ご飯、食べる?」

『いらない』

愛唯羽は朱里を見ることなく、自分の部屋へ篭った。
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