all Reset 【完全版】



亜希を待たせる場所は、在学生しか入れない本館にしようと決めていた。


本館はいつも空いている。


分厚くて難しい、誰が見るんだって本がたくさん並び、学生がたむろできる雰囲気は全くない。


たくさんの書物は手に取ってもらおうと待っているのに、そこで本を選ぶ人間を俺はほとんど見た記憶がなかった。



学生証を提示して中に入ると、本館内の自習スペースに向かった。


閑散とした空間には数人の学生しか見当たらない。


数百人が座れる自習スペースにも、ぽつりぽつりとしか学生がいなかった。


一番奥の席に行くと亜希はバッグを机に置き、音を立てないように静かに椅子を引いた。



「絶対ここにいろよ? 勝手にどっか行くなよ?」



良平は真剣な面持ちで亜希に言い聞かせる。


それに対し、亜希は微笑んでうんうんと頷いた。



その様子を見て、俺はなぜか不安を感じ始めていた。



やっぱり、独りにするなんて無謀な気がする。



「なぁ、やっぱ俺……」


「……あ? 何だよ」


「いや、授業出ないで、亜希といた方がいいかと思って……」


< 123 / 419 >

この作品をシェア

pagetop