all Reset 【完全版】

 翼とアクアマリン




夕方、四時過ぎ。


この時間になると、どこからともなく人が集まってくる。


制服姿の高校生。

私服姿の若者。

ちらほらスーツのサラリーマンなんかも見当たる。


代々木公園を背にして、亜希と俺はこれといった目的もなく表参道を歩いていた。


もうすぐラフォーレが目印の交差点に差し掛かる。



「良平くん、どこに遊びに行ったのかな?」


両手をぷらぷらと振りながら亜希は言う。


左手に持つバッグが、前と後ろへ行ったり来たりを繰り返す。



「どこだろうな?」


ってわけで、俺も良平が今日何してるかを知らない。



「お友達と遊びに行くって言ってたよ?」


と、亜希は言う。


俺を誘ったように良平にも電話をかけたらしいけど、良平は今日一緒じゃない。


亜希はさっきから、良平の行方ばかり気にしている。



「じゃあ、誰かとどっか行ったんだな?」


「ふ~ん、そっかぁ……」



ぷらぷらしてた手をもっと大きく振りながら、亜希は物足りなさそうにそう言った。



交差点に近付くと、四方八方からから集まってきた人で歩道はごった返していた。


どっち方面を見ても、信号待ちする人の頭だらけ。


数え切れない頭を見ていると、さっき通りすがりに見た竹下通りを思い出した。


通りいっぱいに頭がひしめき合っていて、アスファルトの地面が少しも見えなかった。


頭の上を歩いてけそう。

そんなくだらないことを思った。



「……?」



突然服を引っ張られた気がして目を向けると、亜希がシャツの裾を握り締めていた。


< 162 / 419 >

この作品をシェア

pagetop