all Reset 【完全版】
第八章 ココロとココロ

 温かい結晶




良平と話してから、もう一週間が経とうとしている。


今にも白い粉が舞ってきそうな薄暗い空を、俺は人ごみから離れて見上げていた。



気が付けば、今年ももうすぐ終わりを迎える。


今日はクリスマスだった。



暖かく身支度した人々が、楽しそうに前を過ぎ去っていく。


その先には、レインボーブリッジが浮かぶ東京の海が広がっている。



どうしてここに来たのか、自分でもわからない。


最近、無自覚な行動が多すぎて俺は自分に呆れてたりもする。


決まった予定でもあるように家を出て、それからフラフラっとここにたどり着いていた。



『来年のクリスマスさぁ、もしわたしに彼氏いなかったら……秀がわたしと遊んでね?』



一年前、須田の相談をしてきたあの日、亜希が言った何気ない言葉。


喧騒から離れた、この小さなクリスマスツリーの前で待ち合わせ。


他愛も無い会話から生まれた、その場の流れような約束だった。



『予定入れちゃ駄目だからね』


って言ってみたかと思うと、


『でも秀に彼女ができてたら、そっちが優先かぁ……』


なんて、遠慮気味に笑ったりした。



コロコロ変わる表情が可愛くて、俺は返事もそこそこ亜希を見て笑っていた。



まだ、あれから一年しか経ってない。

たったの一年。


それなのに、ずいぶん昔のことに感じて仕方ない。



この一年、それだけ目まぐるしく過ぎ去っていった。


< 276 / 419 >

この作品をシェア

pagetop