all Reset 【完全版】



エンジン音が耳に入って振り返ると、さっきの三人組の乗る車が駐車場を出てくとこだった。


現実に戻ってみると、吹き付けてくる潮風で顔面がかなり冷え切っていた。



昨日の夜、亜希とやってた交換日記を久しぶりに開いた。


亜希の記憶が戻ったら渡そう。


そう思って、最後のページを書いてきた。



亜希が過去を取り戻したら、何て伝えよう?



伝えたいことが有りすぎて上手くまとまらないかもしれない。


自分の気持ちを伝えるってことがこんなにも難しいなんて思ってもみなかった。



でも、ありのままで。


順序なんか間違ってもいい。



ずっと好きでいたこと。


これからも、ずっと変わらないってこと。



一緒にいてほしいってこと。



ありがとうって気持ち。




全てを、素直に伝えようって思う。



すぐ近くに停めてた車の中から、携帯の着信音が微かに聞こえてきた。


運転席のドアを開け、助手席に放置してた携帯に手を伸ばす。


開いた画面を見て一瞬固まった。



亜希……。



考えてただけあって一気に緊張する。


気を落ち着かせ、ゆっくりと通話ボタンを押した。



「……はい」



向こうの世界と繋いだ携帯からは、ざわざわとした人の声が聞こえた。



『もしもし? 秀……くん?』



雑音に紛れながら俺を呼ぶその声は、何ら変わりのない亜希の声だった。


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