all Reset 【完全版】
最終章 Dear……

 わたしの好きな人




秀と話した日から二日はすぐに経った。


明後日。
そう思った日はもう今日になっていた。



いろいろ考えた。


でも、結局わたしが探す言葉は見つからない。



いまだもやもやした頭を抱えながらわたしは両手を出している。



「じゃあ、そのときいきなり全部思い出したって感じなんだ……」



ベースの透明なジェルを載せながら志乃さんが言う。



記憶が戻ってから初めてのネイルサロン。


志乃さんはわたしの話を聞いて、動揺を隠し切れてなかった。


でも、すぐに自分のことのように喜んでくれた。



月に二回くらいしか会わないのに、ただの客なのに、そんなわたしの話を聞いて目を潤ませてくれた。



記憶が戻ったことを喜んでくれる人がいること。


わたしはそれが本当に嬉しかった。


何ともなければ気付かないような大事なこと。



“周りの人の温かさ”



記憶を失って、それがよくわかった。



「でも……ほんとによかった」



志乃さんは相変わらずの微笑みを浮かべてそう言った。


< 339 / 419 >

この作品をシェア

pagetop