all Reset 【完全版】

 嘘も方便





四月二十七日。


日に日に暖かくなる風が少し強く、若葉を一方向に吹き付けている。


今日も空は快晴。


一面に広がる学食の窓から、ぼんやりと行き交う学生たちを眺めていた。



「おっそいなー、良ちゃん」


横に座る亜希がポツリと愚痴る。


何となく顔を向けると、カールした長いまつげに目が留まった。


二重でくりっとした亜希の目は、横から見てもはっきりと存在感がある。



「……寝てるかもな?」


「えっ、うそ」


「たまにいるじゃん。授業中寝てて、終わってもそのまま寝続けてる奴」



良平の株を下げるわけじゃないけど、そういう奴は実際にいる。


自分の取ってる授業でも何人かは必ずいるし、よく見る光景だったりする。



「あー……たしかに。いるいる、そういう人」


俺の勝手な想像話に亜希はうんうんと同調する。


それとほぼ同時だった。


背中をバシッと勢いよく叩かれた。


振り向くと、俺と亜希の間に良平が立っていた。



「わりぃわりぃ、遅くなった」


「もうっ! いったいなぁ」


亜希がそう言って良平の腕を叩き返す。


「授業終わって質問とかしちゃっててさ。偉くね? 俺」


得意気に言いながら手にしていた教科書類をテーブルにどさっと置く良平。


向かいの席の椅子を引いた。


後ろめたさの無い様子に、寝てたという予想ははずれたか、と俺は密かに思った。


「へぇ~……意外」


亜希はどこか面白くなさそうに呟き、椅子にかけていたジャケットを手に取る。


椅子から立ち上がった。

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