all Reset 【完全版】



「まぁ…そういうことになるのかな? 秀ってさ、高校の時からモテてたろ? だから、付き合ってる女がいても不思議じゃないっていうか」


「亜希先輩は何か言ってますか?」


「え?」



亜希?

え、何でここで亜希が出てくる?



「いや、何とも」


「そう…ですか……」


尋乃は何を考えているのか、うわの空みたいな返事をした。


その反応が気になりつつ、俺は尋乃から目をそらす。
せっせと働くおばちゃんを眺めた。



「でもまぁ、アイツもあれで結構馬鹿正直な奴だから、好きでもない女と付き合ってらんないんだろ」


「それなら……最初から付き合わなければいいのに」



ポツリ。


尋乃のこぼした些細な一言に、俺の心臓がドキンと音を立てた。



最初から…

付き合わなければいい……。



その言葉が胸の辺りを圧迫してくる。


それはまさに、今の俺だった。



『だったら、最初から付き合わなければいい』



もし…自分もそういう立場だと知ったら……


尋乃はどう思うのか?



考えただけでも悲惨だと思った。



人を傷つけることはしたくない。



でも……


今の自分は確実にそれをしそうな状態にある。



「でも、仕方ないですよね?!」


黙るしかない俺の横で、尋乃は急に明るい声を上げた。


「良平先輩が言うように、前田先輩はモテる人だし、そんなことだってあるかもなって思いました!」


穏やかな笑みを浮かべてそんな風に言ってみせる尋乃を見て、



早く別れを告げよう。



改めてそう思い知らされた。


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