all Reset 【完全版】

 波のように絶え間なく




茅ケ崎に着いたときには完全に日が落ちていた。


車から降りると、一瞬ぞわっとするような冷たい風に吹き付けられる。


四月の夜はまだまだ肌寒い。


その上、海岸には思った以上に強い風が吹きつけていた。



車から降りると、良ちゃんは一人で松林を走っていってしまう。


わたしもそれを追いかけて走っていこうと思ったけど……すぐに断念。


ヒールの靴が海の砂にずぼずぼ突き刺さった。


海に行くってわかっておきながら、今日のわたしはワンピースにヒールなんていう格好。


今更ながら大失敗に気付いた。



こういうのがTPOをわきまえてない奴って言うんだろうな……。



「亜希、だいじょぶか?」


おぼつかない足取りで歩いていると、前を歩いていた秀が振り返った。


「うん、何とか。だいじょぶだよ」


立ち止まって待ってくれる秀。


良ちゃんはわたしを気にもしないで行っちゃったのに、秀はこうして気に掛けて待っていてくれている。


そういう細かなとこ、やっぱり秀は優しい。


良ちゃんも優しいとこはあるけど……まだまだ。


秀に比べたら細やかな気は遣えないし、大人じゃない。



秀に追い付くと、わたしたちは並んで暴風林の道を歩いた。


歩幅を合わせてゆっくり歩いてくれる秀。



明かりのない松林に秀と二人っきり……。


そんな状況にドキドキと鼓動が高鳴る。



暗くて見えない地面に目を凝らして歩いていると、

突然、

何の前触れもなく右手を掴まれた。


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