all Reset 【完全版】



あのとき、尋乃の体温を感じながら頭の中は亜希のことでいっぱいだった。



俺って最低な奴……。


でも、わかってる。


心が他に行ってても、男はそんなもんだ。


……不可能じゃない。



過去に何度か同じような経験はしていた。


高校のときの部活のマネージャーだとか、違うクラスの同級生だったりとか。


付き合って、別れて。

そんな経験もある。


でも、今回は違う。


亜希が関与してる。


話は全部筒抜けになっていて、尋乃から亜希に全部伝わる。


そう思うと、昨日のことはどうしようもなかった。


恨む相手は自分自身だけど、なぜか尋乃を恨んでいた。



ほとぼりが冷めたと思って大学に行くと、それはそれで最悪で、


『野獣』


なんて、からかい半分亜希は言いたい放題だった。


尋乃が始終報告したのか、亜希は冷やかしを通り越して楽しむ始末。



散々だった……。



キスマークなんかつけて行った日には、一生もののネタにされたに違いない。


今考えてもげんなりする。



結局のところ『亜希の思う壺』で、結果『言われるがまま』の行いでしかなかったわけだ。


その前もその後も、亜希を好きだっていう気持ちは変わらないし、だからこそ格好をつけようとする自分が存在した。


でもそれは、ただ後悔するだけの出来事になった。


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