みんなみたいに上手に生きられない君へ
笑い過ぎて出た涙をぬぐうと、珠希ちゃんはあたしの顔をおかしそうにじっとのぞき込む。



「あたしだよ~?
好きな気持ち隠して、友だちでいられると思う?
もし今でも圭佑のこと好きだったら、もっとがつがついってるって」



それもそうか......。

珠希ちゃんって良くも悪くも嘘がつけないタイプだし、もしまだ渡辺くんのこと好きだったら、隠せないだろうな。

そもそもわざわざ隠したりしないで、積極的にアピールしてそう。


納得してそうだねと頷くと、珠希ちゃんは分かればよろしい!となぜか得意気な顔をした。



もう今はただの友だちみたいだけど、......でも。

珠希ちゃんと渡辺くんは昔付き合っていた。


......なんだ、やっぱり、噂って当てにならない。

みんなは渡辺くんが人妻キラーだとか年上しか好きになれないみたいなこと言ってたけど、普通に同世代の女子を好きになれる人だった。





「じゃ、あたしここだから。またね」

「うん、またね」



二年二組の教室の前で一度足をとめて、私に手を振ってから、珠希ちゃんは教室に入っていく。

それから、私も保健室に行く前よりも、軽くなった足取りで自分の教室へと戻った。


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