山賊上がりの近衛兵

差し迫る死の匂い

―何! 何で!あの人たち、私を追って、どうして? 山賊ってどういう……

「アッ!」

 瞬間上がった彼女の悲鳴。右腕に突如生まれた、焼けるような痛みに彼女はとうとう体勢を崩し、転んでしまった。

「イッタァァァァ。あ……」

「動いた奴を矢で、やるじゃねぇか。お前ら気を抜くな。ガキでも山賊、首が斬り落とされてもその咢で喉笛かみ砕かれるものだと思え!」

 痛みの出所を倒れながらも目視するルーテシア。そして確認してしまった。自らの肩口から血が流れているのを。服の布はその個所だけなくなっており、パックリと切れているその傷跡を見れば、男たちが放った弓矢がかすったものだとは理解できた。

 耐えがたい痛み。だが、それでもルーテシアが不安でならなかったのはそんな事ではなかったのだ。痛みにうめき、倒れている間に、男たちはついにルーテシアに追いついてしまったのだった。
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