山賊上がりの近衛兵

ジイジと”山賊” 山の戦士達

「だっておじさんたちが……」

 未だ、先日襲ってきた男達が口にした“山賊”という言葉の意味が呑み込めていない、飲み込みたくないルーテシアは里の知人達が、そして襲ってきた男達がその戦いで次々と倒れていく様を悲鳴を上げながら目の当たりにした事もあって不安と恐怖でその声を震わせる。

 そして、そんな襲ってくる男達に剣気、覇気を湧き立たせながら次々と切り倒していったのがあの優しかったベルトラインであったことも彼女が胸に黒い靄立ちを秘めさせる一因となっていた。

「彼らは山の戦士です。いつこうなってもおかしい事ではありませぬ。貴方はご自分の心配だけなさって頂かなくては」

「ジイ……」

「今はこのジジイの事も忘れなされ。彼らを憐れむ事も許しません。それは彼らを冒涜する事に繋がります」

 彼だけではない。そんな状況、普段気さくで明るく、自分を娘の様に可愛がってくれた里の者、男女問わずそのほぼ全てが、見たことない程目を鋭くさせ、手に持つ武器の握り手に力を込めている。

「何を言っているのか分からないよ。ジイジ」

 その余りの苛烈さと敵集団との交戦中に殺されるのではないかと言うイメージ、おぞましい光景に何度も嘔吐を禁じえなかったルーテシアにとっては、もうそれ以上ベルトラインに対し言葉を発する事が出来ないでいた。
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