山賊上がりの近衛兵

合流 そして……

「待たせしてしまったか。ベルトライン殿」

「いいや、こちらもこれからという物。なんと、あの時の若造が……あやつにソックリじゃわい。シュットハルト殿」

 カルバドスは戦っている仲間をかき分け、呼びかけに遂に立ち止った父の広い背中越しにその先を見た。

 目を引きつけて離さない。なんと、楽しそうに笑っていたのは里の者だけではなかったのだ。いつ来るともしれない死にその身を震わせるルーテシアがいて、その隣には威風堂々と言った立ち姿、かつて見たこともないほどに勇壮に笑っている彼女のジイジ、ベルトラインがいた。

 その時、特に理由もきっかけもなくカルバドスは分かってしまった。

 何故この場にあって父が、仲間が、そしてベルトラインが笑っていたのか……

 そして理解した。どうして父が母を仲間に預けてでも自身と弟のライナをここまで連れてきたのかを。
 
「それで、お前達……」

 父親にかけられた声を以て、これから話されるであろう内容を察知したカルバドスは強く拳を握りしめる。
 それは憧れ続けた強い男からの魂の継承だった。思う所は色々ある、納得など出来ない事の方こそ多い

「ルーテシア様を連れて、この場から逃げろ」

 頭領である父とベルトラインが発した言葉、それを耳にして時が止まってしまうルーテシアとライナの姿を目にしてそうなる事も予想はしていた。

 それでも青年はその言葉に応じるしかなかった。

「分かった。だがルーテシアだけじゃねぇ。俺の見立てた若い連中も連れていく。兵隊が必要だ。この場を切り抜け、これから守る為に、最低限十分な数の兵が」

 驚きもなく、悲しそうに見せるでもなく、淡々とそれに請け答えたカルバドス。揺れぬように努めたのはこの二人に安心して自身に託して貰う為だった。安心してその最期まで、気高い戦士として戦い抜く事ができるように。
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