生まれ変わっても、またあなたに恋をした
私はいつものように窓の外を眺めていた。

窓側一番後ろの席は、窓の外を眺めることができるから好きだ。

今にも雨が降り出しそうな暗い雲が立ち込めているが、それ以外はいつも通りの風景。校門の方に目を向けると、たくさんの生徒が下校していた。

そっとため息をつき、帰りの支度を始める。いつの間にか2-2の教室に残っていたのは私だけになっていた。

荷物を全て学生鞄に詰め終わったとき、ザーッという音がした。

窓の外を見ると、大雨が降っていた。

またため息をついて鞄を持って廊下に出た。音楽室から綺麗なピアノの音が聞こえてくる。


「美羽(みう)!」


名前を呼ぶ声に振り返ると、そこには幼なじみの森山祐希(もりやまゆうき)が立っていた。


「祐希…まだ残っていたの?」


「顧問と話してたんだ。テスト週間中にも道場開けてくれって交渉してた」


祐希は剣道部で、3年生が卒業して部長になった。とても強く、県では1位と言われるほど。


「練習熱心だね」


「顧問にも言われた。んで、勉強しろって断られた」


「まぁ、進学校だもんね」


くすっと微笑みながら言うと、祐希はちょっと俯いた。


「別にいいじゃんか…勉強はそこそこできるのに」


「そこそこじゃなくて、かなりでしょ?もう用がないなら帰ろ?」


「そうだな」


「あ…私最後だから鍵職員室に持って行かなきゃ」


「待っといてやるよ」


「ありがとう」


教室に鍵をかけて、2階下の職員室に向かって歩き出すと、祐希が横に並んできた。


「美羽はなんで残ってた?」


「んー…考えごとしてたの」


「解決した?」


「全然。疲れただけ」


「寝たら治るよ」


「帰ったら寝るよ」


そう言って笑うと、祐希は優しく微笑んだ。


「美羽って、素直だよなぁ」


「そう?」


階段を降りながらそう聞くと、祐希は真面目な顔で頷いた。


「うん。素直で…可愛い」


「ふふっ…お世辞なんか言わなくていいのに」


「む…」


少しむすっとした祐希を見ていると、少しからかいたくなった。


「祐希だって、すごくかっこいいよ」


「え?!」


顔を赤くする祐希を見て満足した私は、いつの間にかついていた職員室のドアをノックした。
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