生まれ変わっても、またあなたに恋をした
「あいつ…何する気なんだろうな」


「藍原照伸?」


「うん」


祐希は前髪に触れながら考えていた。

前髪に触れるのは、かなり真剣に悩んでいるとき。


「だって…昔はともかく、今はかなり犯罪に対して厳しいし」


確かに、今の日本はたくさんの法律がある。

銃や刃物を持ち歩いていたら捕まるし、防犯カメラだってたくさんある。仮に殺人をしたら、捕まらないことなんてほとんどない。

でも–––。

昔、大姫が自分のものにならないと分かったとき。

彼は大姫を強姦した。

大姫は鎌倉殿の娘。

そんなことをしたのがばれたら、ただの死刑では済まされない。


なのに、彼は私に口止めすらしなかった。


私が声を出せなくなることが分かっていた、なんてことがあるはずがない。

彼は–––、


「きっと、捕まることなんか彼にとってはどうでもいいことだと思う」


私の声に、祐希が振り向く。


「いや…それはさすがに」


「ある。彼が前世のままなら…そんなことがどうしたって、絶対言う」


私の断定的な口調に、祐希は少し考え込んで…


「美羽。前世で、俺が殺された後何があった?」


「…何もないよ?」


絶対に、祐希にだけは知られたくない。

他の誰に知られても、祐希にだけはそんなことは知られたくなかった。


「本当?嘘ついているときの顔だけど」


祐希には私が嘘をついていることくらいお見通しだということは分かる。

小さい頃から–––前世から、一緒にいたんだから。

それでも–––


「何もないよ」


私には、そう言うしかなかった。
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