最期の時間を君と共に


「……三柳……さん?」

普段なら作る昼ご飯も今日は作る気にならず、少し遠くにある隣町のスーパーに行こうとした途中、見覚えのある女の子を見つけた。三柳 翼(みやなぎ つばさ)さん。中学校が一緒だった子。つばさ、とかっこいい系の名前にしては可愛らしい顔立ちをしている。そしてなにより、彼女が印象に残っている理由は、誓に告白していたからだ。月に1度は告白されている、と噂があった彼女がだ。本当にびっくりした。でも、もっとびっくりしたことに、誓は彼女をふったのだ。こんな可愛らしい子をふるなんて、目腐ったんじゃないの、とかいじっていたけれど、内心嬉しくてしかたなかった。

「……あぁ、深山さんね」

「こんにちは」

彼女も私のことを覚えていてくれたようだ。いい意味で覚えてくれていたのか、定かではないけれど。ぎこちなく挨拶をしてみる。怖気づいていたのか、彼女は私を安心させるかのように、新しい彼いるから、とわざわざ伝えてきた。
< 180 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop