ナナクセ探し 中学生編
委員会を終えて教室に行くと、いつもはいる川野がいなかった。

そうか、篠田が学校休んでいたもんな。

やっぱり、俺の事は待っててくれないんだ。

俺は篠田のついでなんだな、と少しがっかりする。

まあ、仕方がないか、と自分を慰めながら鞄を持ち、帰ろうとした。



とその時、教室の戸が開く音がして見ると、川野が入ってきた。

今日はもう会えないと思っていたので、嬉しくなる。

「川野?」


何だか様子がおかしい。

自分の席に向こうを向いて座り込んだ彼女に近づいた。

肩が震えている。

左手首を押さえているようだ。

「何かあった?」

彼女は首を振る。
言いたくないのか、言えないのか。

ーーー俺は彼女の右手を避け、その下にある左手首を見た。

…………赤くなっている。

誰かにギュッと掴まれでもしたのだろうか。


重ねて問おうとしたが、彼女は首を振り続け、何も言わないつもりのようだ。






俺は痛々しい左手首に口付けた。

かわいそうに。

怖い思いをしたのだろうか。

これをやったのは、オトコだろうか。

俺のーーー俺の彼女にこんな事をするなんて許せない。

そう、思うと堪らなくなった。

そして俺は、彼女の手首に歯を立ててしまっていた。

「痛っ!!」

その声で、ハッとして離す。

はぁ、やってしまったよ、俺。

もっと、理性的にならなくては。

「悪い。俺の印つけちゃった。」

歯形が付いてしまっている。
痛い思いをさせてしまった。

「俺にも印つけて。」

左手を彼女の目の前に突き出す。

彼女は戸惑いながらも、歯形を残した。



ああ、メチャクチャ抱き締めたい!
< 30 / 48 >

この作品をシェア

pagetop