黒猫の香音(前編)
「早いモンだな、月日が流れるのは…


あれからもう『四年』か。」


その声に我に返り、急いで香音は『それ』を懐に直した。


「…いつの間に入ったの?」


「普通引き戸の音で気付くだろうが、耳に入らない程まだ心配か?」



香音の眉間に微かに皺が寄る。



「『親』が『子供』を心配するのは当然だよ。

今だってもしかしたら今日にでも見つかるんじゃないかって未だに夢見てる、つまらない戯れ言でしかないのは分かっているけど。」



暫く黙って瑠華が口を開いた。



「まぁ、俺も実際に腹は痛めてないから何も言えねぇけど、俺だって忘れてる訳じゃねぇよ。


柄じゃねぇけど誰も居ない所で強く願ってはずっと泣いてた…

『あの日』だってもうすぐX'masが近付いていたから『アイツ』の好きそうなおもちゃやお菓子だって買ってずっと待ってたんだ。

いつもの様に笑いながら「るー、るー」って喜んで来るのを、でも…」



急に声が小さくなり言葉を詰まらせる。

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