魔法使い、拾います!
「ねぇ、ヴァル。言いたくないんだろうけど、やっぱり教えて。どうして路地裏で倒れていたの?」

リュイの問いかけにヴァルは背筋を伸ばし、手にしていたスプーンとパンをテーブルに置き、真面目な表情でリュイを見つめる。

「それを話すには、まだ僕の心の整理が追いついていないのです。」

「ケガをしたのには、そんなに複雑な理由があるの?」

「一言では説明しきれません。僕の周りで起こった出来事が急展開過ぎて……。」

「話せる範囲でいいよ。……やっぱり話したくない?」

「ははっ……許してください。」

「でも私ヴァルの主だよ?聞く権利あるよね?」

さすがに強引だったかな。いや、かなり強引だよね。嫌われちゃうかな。とも思ったが、言い出した手前、もはやリュイ自身も自分を制御できなくなっている。先程からのこの感覚は何だろう。婚約者のことも含めヴァルの全てが知りたくて仕方ない。

ヴァルを見つめるリュイの目が、推理小説の秘密を謎解く読者のようになっている。ヴァルは軽く天井を見上げた。そして、自分の行動を悔やむかのように、小さく意味深なつぶやきをした。

「誘惑に負けてここへ来るのではなかった。」
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