魔法使い、拾います!
「そんな訳ないでしょう!約束は破っていないと言ったではないですか!会ったのは偶然なんです。本当です。信じて下さい。僕だって驚いたくらいなんです。リュイは関係ないんです!カタの自宅に帰してあげてください!」

ヴァルは一歩踏み出してジョナに詰め寄る。

「師匠。お願いです、それを返してください。そのテントウムシのペンダントがあったから、辛い修行にも耐えられたんです。努力して師匠の言葉通り、七色の光を体得して守護長にもなりました。師匠には育てて頂いたご恩がありますが、でも、それだけじゃない。魔法使いとして尊敬しているし、本当の父のように慕ってもいます。師匠の言葉に背く気持ちなんて毛頭ありません。」

ヴァルは必死にこの言葉が嘘ではないと、心を尽くしてジョナに語り掛けた。

「いつになく饒舌だな。ティアよりもこれが大事か?」

「そういう事ではありません。ティアとは結婚するんです。僕の妻として、一生大事にします。師匠の望むことには全て従ってきたではないですか。それなのに僕は、ペンダント一つ持つことすら許してもらえないのですか?」

「それこそが裏切りだということが、なぜ分からん?」

ヴァルはぎゅっと拳を握った。

目を閉じれば、幼い頃のたった一夜の記憶がすぐに思い浮かんでくる。余りにも理不尽で辛かった洞窟での修行の日々を、あの家族が和らげてくれたのだ。

思い切って洞窟を抜け出したあの日の夜を、ヴァルは忘れることなどなかった。
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