僕は何度でも、君の名前を呼ぶよ。


キョトンとした顔の女の子は、ふわりと俺の傍に近付いて来る。

そして、俺の顔に自分の顔を近づけてきた。

まるで、俺の視線と自分の視線が本当にぶつかっているかどうかを確認するかのように。


「……あなた、あたしが…見える?」


すこし面白おかしそうに、くすりと笑いながら聞いてきた少女。


「見えるも何も…見える」


俺は何度も目をこすったが、少女は宙を浮いている。

くるりと宙返りをしたり、俺の周りを泳ぐようにすいすいとまわっている。


「わあ、うれしい!!」


ほんとうに嬉しそうに笑う彼女は。


「君は…誰?何者?」

「あたし?」


地にふわりと体をつけた少女は、にこりと笑う。
そしてふわふわとしたワンピースの両端を持って広げ、軽く会釈をした。


「あたし、アイ」



< 5 / 72 >

この作品をシェア

pagetop