ハルとオオカミ


彼は「へんなやつ」と笑うと、目を伏せ、長い睫毛に影を落として、優しい声で言った。




「……憧れてるっつうのは、知らなかったけど。はるが俺のこと、大事に思ってくれてんのはなんとなくわかってたよ。だから俺も大事にする。はるが格好いいはるのまま、傷つかないように。……約束する」





……また涙が出そうになって、頑張って堪えた。

だって格好いい私は、すぐに泣いたりしない。このひとの友達の私は、いつも堂々としてるから。



「私も、約束する。五十嵐くんとこれからもこうやっていられるように、何があっても負けないって。憧れのひとが誇れるような、格好いい人になる」



……ああ。私、きっとこの約束を一生忘れないだろう。


間違いなく私の生涯で最も尊く、瑞々しく、愛おしい約束になる。



このひとを見つけた瞬間と同じように、私は何の疑いもなくそう確信した。


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