ハルとオオカミ



え? ほんとに?

今、私のすぐ後ろに五十嵐くんがいるの? マジで!?


やばいやばいやばいやばい。こんなの数か月も続けるの? 緊張で吐きそうなんだけど!


でもこの位置関係だと、授業中に五十嵐くんを盗み見ることができない。死活問題だ。


どうやったって後ろを振り向かなくてはならない。しかも、さりげなくできないし。五十嵐くんが見えたときには目がばっちり合ってしまう。そんなの無理だ!


すっかり頭の中が大混乱していて、その後の先生の話なんかは何一つ覚えていない。


ただただ、今後ろに五十嵐くんがいるということだけでドキドキしていた。


授業終わりのチャイムが鳴って、ようやく我に返った。慌てて顔をあげる。


「き、きりーつ!」


授業開始と終了時に号令をかけるのは委員長の仕事だ。さっきまで先生が何の話をしていたのか何一つわからないけれど、とりあえず号令は忘れずできたからホッとした。


「はーる」


みんながガタガタと席を立つ中、アキちゃんがニヤニヤしながら私の席まで近づいてきた。


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