王太子殿下は囚われ姫を愛したくてたまらない


「これは転んだんですか?」

ドレスをまくり膝を見せると、傷を見るなり聞かれたから「木から落ちて……」ともごもごと答える。
隣から降ってくる視線が怖い。

「ガイル。あと、マイケル。そっち向いてろ」

私が足を出したからか、シオンさんが注意すると、ガイルは言われた通り背中を向け、男の子は気に入らなそうにシオンさんを見た。

この子の名前はマイケルっていうんだ、と知る。

「だったらおまえもそっち向けよ。クレアに恥ずかしい思いをさせる気か?」

そう言い、ふんと背中を向けたマイケルに、シオンさんは「口の悪いガキだ……」とわなわなとしながら、壁の方に向いた。

「あざにはなるだろうけど、痕は残らないと思うので安心してください。傷もひどくない」

傷口を消毒しながら言うお医者様に「はい」と答えると、シオンさんが「それだけ?」と背中で言う。

だから「あ、すみません。ありがとうございます」と慌てて付け足すと、「違う。そうじゃない」と珍しく不機嫌な声で言われてしまい、困ってしまう。

今の会話に、お礼以外に答え方があっただろうか、と。

私が何も答えられずにいると、シオンさんは小さく息をはいてから「もういいよ」と呟くように言った。
その背中が、やっぱり怒っているように見えた。


「今後から、私がこの部屋から離れるときには、いかなる時もすべて施錠します。まるでクレア様を信用していないようですが、その通りです。前科がある以上、これからは全力で見張りますよ」

ドアの前で厳しい口調で言うジュリアさんに「心配をかけてごめんなさい」と謝る。




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