久遠の絆
ぽんぽんとニアスの肩を叩いて側を離れようとする熊に、ニアスは
「でも考えなきゃダメですよね」
とぽつりと呟いた。
「ん?いやいや、そんな深刻にならなくていいからさ」
「でも、考えなきゃいけない気がします」
「あちゃあ、余計なこと言ったなあ。カイルっちに怒られちゃう」
「カイルさまは、きっとカイルさまも中将と同じ思いでおられると思います。だから僕を中将のお側に来させたんだ」
「そうかあ?」
「カイルさまのことは僕が一番知ってるんです。あの方もきっといろんなジレンマと戦いながら、この度の戦争の指揮を取っておられるんです。だからこそ、お側にいる僕ももっと考えなければいけないんだ」
「ん、まあ考えるのはいいことだよな。でもあんま考え過ぎると、若禿げするぞ」
もう一度肩を叩いて、熊は司令官席へと戻って行った。
その後もニアスは、目の前で繰り広げられている空中戦を見ながら考え続けた。
(あの人は……)
豪放な振る舞いの陰で、あんなことを考えていたんだ……。
ただ好戦的なのだと思っていた。
けれど、いつもあんな葛藤を抱えながら戦いに挑んでいたのか。
(俺は、あの金属の向こうに、人の命があることを思ったことがあるだろうか)
漠然とは感じていただろう。
しかし『アザゼル』に乗るというステータスを望んでおりながら、それを手に入れた後、人命を掛けた行為をすることになるのだということに思い至ったことがあっただろうか。
(俺はまだまだ子供なんだ……)
カイルやゲルシュ・グレンの足元にも及ばないほど、子供なんだ。
軍人とはただ格好の良いものではなく、常に『戦争と平和』の狭間で葛藤を強いられる
ものであることを、ニアスはこの時の会話で気付いたのだった。
「でも考えなきゃダメですよね」
とぽつりと呟いた。
「ん?いやいや、そんな深刻にならなくていいからさ」
「でも、考えなきゃいけない気がします」
「あちゃあ、余計なこと言ったなあ。カイルっちに怒られちゃう」
「カイルさまは、きっとカイルさまも中将と同じ思いでおられると思います。だから僕を中将のお側に来させたんだ」
「そうかあ?」
「カイルさまのことは僕が一番知ってるんです。あの方もきっといろんなジレンマと戦いながら、この度の戦争の指揮を取っておられるんです。だからこそ、お側にいる僕ももっと考えなければいけないんだ」
「ん、まあ考えるのはいいことだよな。でもあんま考え過ぎると、若禿げするぞ」
もう一度肩を叩いて、熊は司令官席へと戻って行った。
その後もニアスは、目の前で繰り広げられている空中戦を見ながら考え続けた。
(あの人は……)
豪放な振る舞いの陰で、あんなことを考えていたんだ……。
ただ好戦的なのだと思っていた。
けれど、いつもあんな葛藤を抱えながら戦いに挑んでいたのか。
(俺は、あの金属の向こうに、人の命があることを思ったことがあるだろうか)
漠然とは感じていただろう。
しかし『アザゼル』に乗るというステータスを望んでおりながら、それを手に入れた後、人命を掛けた行為をすることになるのだということに思い至ったことがあっただろうか。
(俺はまだまだ子供なんだ……)
カイルやゲルシュ・グレンの足元にも及ばないほど、子供なんだ。
軍人とはただ格好の良いものではなく、常に『戦争と平和』の狭間で葛藤を強いられる
ものであることを、ニアスはこの時の会話で気付いたのだった。