久遠の絆
「そろそろ執務に戻らないとな。ヘラルドはいないけれど、それでも心配するやつはいるから」


「シドさんは優しいんですね」


「俺が?優しい?」


シドは目を丸くした。


「うん、優しいから、だからいろんなことを受け止めちゃうんだ」


彼を恐ろしい存在と思っていた頃が嘘のように、今なら彼の人柄が手に取るように分かる。


(やっぱり近付いて、話をしてみないと分からないことってあるんだな)


「わたし、本当にシドさんと友達になってもいいですか?」


それはもはや心底からの望みとなっていた。


「もっともっとあなたと話をして、あなたのことを知りたい。少しでもあなたの心に寄り添いたい。あなたが今何を考えているのか知りたい。……シドさんにはうっとうしいだけかもしれないけど、でもわたし、本当にそう思うんです」


シドは蘭の真意を探るように、彼女の瞳の奥を覗き込むようにしてまじまじと見ている。


蘭は真剣な表情でそんなシドを見返した。


「お前も辛い思いをしてきたんだったな……」


ぽつりとシドが呟いた。


「俺以上に」


「ううん、シドさんの辛さに比べたらわたしなんて……」


「強がらなくていい」


シドがそっと蘭の頬に手を添えた。


思った以上に冷たいその手の感触に、蘭はぴくりと肩を震わせた。


「強がらなくていいから、お前も、俺の側にいろ」


「え?」


一瞬彼が何を言ったのか分からなかったけれど。


「それって、友達になってくれるってことですか?」


「まあ、そんなとこ」


シドは軍服の上着を取り上げると上に羽織った。


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