久遠の絆
見えないし、分からない。


けれど確実に何かを隠しているに違いない。


(俺にも言えないことか?)


側近の思わぬ裏切りにあったような気分だった。


今迄のように諸手を上げて信じることはできないかもしれない。


一抹の寂しさを感じながらも、浮かぶのはひとりの少女の顔だった。


(あの子の心をこれ以上傷付けたくはない)


それが正直な気持ちだった。


頑なに閉ざされていた自分の心に、溶け込むように自然に入って来た少女の言葉。


『友達になりたい』


そう言った時の彼女の真摯なまなざしが忘れられない。


子供だましだと思う。


けれど嘘偽りない言葉ほど力強いものはなかった。


こんな自分にそう言ってくれる彼女の心に応えたい。


シドは素直にそう思えたのだった。


「会いたい……」


ぽつりと口をついて出た言葉に、シドは我ながら苦笑した。


(この俺が?あんな子供に?)


でもそれが本当の気持ちであるということも、シドは気付いていた。


あの日以来会っていない蘭という少女は、すでに彼の心に深く住み着いていた。





















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